カテゴリ:収益物件 / 投稿日付:2022/04/04 19:05
収益物件のチェック~浄化槽編~
2つの下水の排水方式
下水などの生活排水については、下水道に直接排水する方式と、浄化槽で浄化して排水する方式の
2つがあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
下水道排水
物件で生じる排水を、公共の下水道本管に直結して排水をする方式です。
下水は、下水道本管を通って汚水処理施設に運ばれ、そこで水をきれいにした上で川などに流します。
都市部の比較的新しい物件については、下水道を使った排水方式になっています。
下水道のランニングコスト
下水道は公共の設備なので、直結して排水するためには「下水道使用料」を行政に
支払わなければなりません。下水道使用料は、上水道で使用した水を排水したと考えて、
上水道の使用水量と同じ量で計算されます。
賃貸物件の場合、下水道使用料は各部屋の入居者が個別に負担するケースが一般的なので、
大家のコストとして考えなくてもよいでしょう。
浄化槽による排水
物件で発生した下水を、敷地内に設置してある「浄化槽」できれいな水に浄化した上で、
川に放流します。国は下水道排水を推進しているため、最近の物件で浄化槽を見かけることは
ほとんどありませんが、古い物件や地方の物件については、浄化槽による排水方式が
採用されている場合があります。
浄化槽のランニングコスト
浄化槽は物件所有者である大家に管理責任が発生するため、下水道排水とは違って大家の実費で
維持管理していく必要があります。浄化槽の維持管理にあたって、大家に発生する法的な義務は
次の通りです。
・年に1回の清掃(水質悪化防止)
・年に4回くらいの保守点検(浄化槽の機能維持のための点検)
・年1回の法定検査
浄化槽は公衆衛生に直接的に影響する非常に重要な部分であるため、浄化槽の維持管理の義務など
については、浄化槽法という法律で細かく規定されています。
浄化槽のメンテナンス費用は高額
行政が管理している汚水処理施設で下水を浄化している下水道排水とは違い、
物件個別に設置されている浄化槽の場合は、行政が直接浄化槽の運転状況を把握することが
できません。
そこで、浄化槽の状態を適切に維持管理していくために、浄化槽の清掃については、
行政の許可を受けた業者でしか施工ができないことになっています。
また、汚泥の汲み取り作業費用については、自治体ごとに単価が指定されているため、
相見積もりをとって経費削減することも困難です。
浄化槽の種類
浄化槽には大きく分けて、次の2種類があり、それぞれかかるコストに違いがあるため
注意が必要です。
・単独処理浄化槽
トイレの汚水のみを浄化するための浄化槽で、昭和築の古い物件で設置されているケースがあります。
単独処理浄化槽では、バスルームやキッチンの排水などのいわゆる雑排水は浄化されないため、
現在の浄化槽法では設置することができません。
そのため、購入予定の物件の浄化槽が単独処理浄化槽である場合には、
次に解説する合併処理浄化槽への交換工事が必要になります。
・合併処理浄化槽
汚水と雑排水を同時に浄化できる浄化槽のことです。単独処理浄化槽に比べて浄化槽本体が大きく、
設置するためには大きな敷地が必要でしたが、最近では小型化されてきているので、
設置もしやすくなりました。
単独処理浄化槽から合併処理浄化槽に入れ替えるためには、条件にもよりますが、
おおむね100万円程度の工事費用がかかります。自治体によっては、補助金制度が利用できる場合が
ありますので、水道課に確認しておくとよいでしょう。
浄化槽から下水道への切り替え
浄化槽を維持していくためには、それなりのランニングコストがかかるため、
できれば下水道への排水に切り替えた方がよいでしょう。
浄化槽から下水道に切り替えるためには、建物の排水を直接下水道本管に直結させる必要があります。
下水道本管までの経路がポイント
下水道排水に切り替えるためには、建物の前面道路に下水道本管が埋設されている必要があります。
浄化槽から下水道本管までの距離が近ければ、切り替え工事費用は比較的安くおさまります。
ところが、浄化槽から下水道本管までの距離が長かったり、地上をコンクリートで仕上げてしまったり
している物件の場合は、コンクリートを壊さなければならず、切り替え工事にあたって高額な費用が
かかるため注意が必要です。