カテゴリ:収益物件 / 投稿日付:2022/04/05 18:38
欠陥住宅を見つけるのは難しい~収益物件編~
法令等の基準を満たしていない住宅
建物を建築する際には、事前にどのような建物を建てるのか行政に申請をして、
建築許可を得なければ建築することができません。
ですから、本来であれば、申請した通りの建物を建築していれば、
欠陥住宅ができることはないはずです。
ところが、コスト削減や工期短縮などの理由から、申請した時とは違う設計図で施工する業者が
いるせいで、結果として建築基準法に適合していない欠陥住宅ができあがってしまうのです。
では、欠陥住宅をどのようにして見破ればよいのでしょうか。
欠陥住宅を見破るポイント1:確認済証と検査済証
建築する前に、建築主事や指定検査機関の審査を受けて発行される書類を「確認済証」、
建物完成後に検査を受けて発行される書類を「検査済証」といいます。
どちらも同じような書類ですが、確認済証はこれから建築する予定の建物の
設計図書(平面図、立面図、断面図など)をもとに審査がされ、建築基準法に適合していれば
発行されるため、確認済証だけでは十分とはいえません。
建物完成後に再度検査を受けて、設計図書通りの建物が建築されていることが確認されて発行される
「検査済証」の存在がとても重要なのですが、築年数の古い中古物件の中には、
検査を受けていない建物が多いことから、検査済証がない物件は注意して購入しないと、
欠陥住宅をつかまされてしまう可能性があるのです。
欠陥住宅を見破るポイント2:設計図などを鵜呑みにしない
古い建物でも売主に依頼すれば、設計図、意匠図、設備図、工事仕様書、特記仕様書などが
入手できる場合がありますが、これらの情報をすべて鵜呑みにしてはいけません。
前述した通り、設計図書通りに建てられていない建物が多く存在するため、入手した資料を
鵜呑みにするのではなく、実際の建物と設計図との相違点がないかどうかをポイントごとに
確認していくことがとても重要です。
見えない箇所に注意!よくある9つの欠陥とは
欠陥住宅を見破ることが難しいのは、目視で簡単に確認できない欠陥が多いからです。
外観が明らかにゆがんでいたり、雨漏りがしていたりするようであれば誰でも気がつきますが、
欠陥住宅の多くは、目立つ場所には欠陥がなく、普通では見ない隠れた箇所に欠陥があります。
ここでは、初心者投資家が見落としやすい見えない箇所の代表的な欠陥についてご紹介します。
欠陥住宅1:界壁がない
レオパレス問題で有名になった界壁ですが、実は界壁がない欠陥住宅は決して珍しくありません。
界壁は天井裏の見えない部分にあるため、建築コスト削減のために、設計図書には存在する界壁を
省略したり、十分な防火性能のない素材を用いて施工したりするケースが見受けられます。
界壁に欠陥があると、隣の部屋からの音漏れの原因になるばかりか、火災の際の延焼スピードが速く
なることから、十分な避難時間が確保できません。
界壁の改修工事には、多額の費用がかかるほか、場合によっては立退費用まで負担することになる
可能性もあるため、絶対に買ってはいけません。
界壁の有無については、室内を見ただけではわかりませんが、バスルームの天井にある点検口を
開けると、天井裏の様子が目視で確認できますので、そこから界壁の有無を確認しましょう。
欠陥住宅2:換気扇の接続ミス
バスルームやキッチン、トイレなどについては、換気扇が設置されており、湿気や臭気を吸い上げて
外部に排気する役割を果たしています。ところが、外見上は問題なく換気扇が設置されていても、
天井裏の接続がうまくできていないケースがあるため注意が必要です。
換気扇で吸い上げた空気は、ダクトを通って屋外に排気されますが、換気扇とダクトアダプターの
接続に不良があり、本来排気される空気がダクトから漏れ出して天井裏へ流入してしまうケースが
あります。
接続不良の多くは、本来接合部にあるべきパッキンがなかったり、劣化していたりすることが
原因です。また、換気扇が正しい位置にビスで固定されていないと、作動した際に振動してしまい、
接合部のズレなどにつながります。接続不良であれば、不良箇所を直せば改善できますが、
古い物件になると接続自体がされていないケースも見受けられるため注意が必要です。
そもそも換気扇からダクトに接続する設計になっていないという、通常では考えられない状況ですが、
古い物件や無理矢理リフォームした物件などであり得ます。
接続がされていないと改修に多額の費用がかかるため、絶対に買ってはいけません。
換気扇の接続不良があると、一番問題になるのが「湿気」です。
特にキッチンのレンジフードやバスルームの浴室換気扇などに接続不良があると、
屋外に排気されるべき湿った空気の一部が天井裏に充満する事になり、カビの原因になります。
確認するためには、界壁と同様にバスルームの点検口から天井裏を確認して、
湿気が充満していないか、カビや水滴の跡がないかなどを確認しましょう。
欠陥住宅3:基礎の問題
見えない欠陥の中で、非常に怖いのが「基礎」の欠陥です。基礎は建物の土台となる部分なので、
ここに欠陥があると致命的となります。
基礎の欠陥としてよくあるのが「根入れ深さ」の問題です。
基礎を地中に埋めることを「根入れ」といい、地盤が支えられる重さの限界値を高める効果があり、
建築基準法では次のような根入れ深さの基準が規定されています。
・布基礎:240mm以上
・べた基礎:120mm以上
根入れ深さは上記以上でなければ、建物が安定しません。
建物にとって非常に重要な基礎ですが、実際に確認してみると根入れが浅い欠陥住宅が意外に
多いため注意が必要です。
十分な根入れ深さを確保しようとすると、その分土を掘削する手間がかかり、
また残土の処分費用もかさむことから、見えにくいことをいいことに、施工業者が勝手に根入れを
浅くしてしまうのです。
根入れが浅いと、地震の際に建物の位置がずれたり、最悪の場合転倒したりする恐れもありますので、
絶対に買ってはいけません。
根入れ深さは一般の方が目視で見ただけではわからないため、大手ハウスメーカーではない
町の工務店などが施工した物件については、できるだけ建築士などの専門家にも現地を
見てもらった方がよいでしょう。
欠陥住宅4:柱の問題
地震大国日本において中古物件を購入する際には、耐震性能についても必ずチェックする必要が
あります。中でも、木造アパートについては、柱に取り付けられているべき「ホールダウン金物」が
不足しているケースがあるため注意が必要です。
ホールダウン金物とは、木造建築物の耐震性を確保するための補強金物のことで、
基礎または土台と柱を固定して設置します。設置が義務付けられているホールダウン金物の数は、
一定の構造計算によって算出しますが、必要な数設置されていなかったり、
そもそも筋交いだけで設置がされていなかったりするケースもあるため注意が必要です。
ホールダウン金物が正しく設置されていない物件は、地震が発生した際に倒壊する危険性があるため
絶対に買ってはいけません。小規模な工務店が建てた木造アパートについては、
ホールダウン金物の設置義務を知らない可能性もあるため、できれば建築士にも確認してもらうことを
おすすめします。
欠陥住宅5:断熱材の不足
断熱材は、室内の温度を快適に保つために必要不可欠です。
特に木造アパートの場合は、夏の暑さや冬の寒さを軽減させるためにも、断熱材が適切に
敷かれている必要がありますが、残念ながら手抜き工事によって十分な断熱材が敷かれていない
ケースが散見されます。
断熱材については壁の内側に敷かれているため、壁自体を壊さなければ直接確認することが
できません。そこでポイントとなるのが「結露」です。
窓枠サッシや壁などに、結露した跡が残っている場合については、断熱材の不足が疑われますので、
一度専門家に見てもらった方がよいでしょう。
欠陥住宅6:鉄筋の不足・コンクリート強度の不足
鉄筋コンクリートマンションによくある欠陥としては、「鉄筋不足」と「コンクリート強度不足」
があげられます。
鉄筋不足については、中小企業の工務店だけではなく、大手のゼネコンでも過去に発覚したことが
あるため、大手施工だからといって油断はできません。鉄筋量が不足すると、十分な耐震性能が
確保できなくなるため、重大な問題となります。
コンクリート強度不足については、主に雨の中での施工が原因となるケースがあります。
雨の日にコンクリート打設工事を行うと、コンクリートに雨水が混入し、品質が低下することで
強度が落ちるのです。
また、コンクリートの流れをよくするために、現場の職人が故意に水を混ぜてコンクリートを
流し込むケースもあります。このようなコンクリートを「シャブコン」といい、
強度不足の原因となります。
古いマンションの1棟買いを検討している場合は、過去にコア抜き検査をした履歴がないか
確認した方がよいでしょう。
コンクリートの欠陥のうち、目視で確認できるのが「ジャンカ」です。
ジャンカとは、コンクリートマンションの初期欠陥でコンクリートにできた隙間の事をいい、
打設するときの材料の分離や、セメントの漏れなどが原因で発生します。
ジャンカが屋上や外壁に発生していると、雨漏りの原因になるため注意が必要です。
欠陥住宅7:タイルの剥がれ
建物の外壁がタイル貼りの場合は、タイルの剥がれに注意が必要です。
外壁タイルについては、いわゆる建物の化粧部分なので、躯体などには直接影響ありませんが、
落下した場合の安全性に大きなリスクがあります。
例えば、落下したタイルが通行人にあたって怪我をした場合は、建物所有者が損害賠償義務を
負うこととなるのです。
外壁タイルについては、施工後10年以上経過すると劣化による剥がれの可能性が出てくるため
張り替えが必要になります。
ところが、中古物件の中には築10年以内にもかかわらず、外観を目視すると外壁タイルが数枚
剥がれてなくなっている部分が見つかることがあるため注意が必要です。
築年数が浅いにも関わらずタイルが剥がれている物件については、タイル目地のズレや、
施工当時の日照時間などが原因と考えられます。
特に建物南側の日当たりがよい部分については、タイルが剥がれやすいので重点的に確認しましょう。
欠陥住宅8:雨漏り
雨漏りというと、古い木造アパートで発生するイメージがあるかと思いますが、
実は築20年以内の鉄筋コンクリートマンションでも発生することがあります。
雨漏りの発生原因としては、屋上防水の劣化や施工不良によるものが多く見受けられます。
雨漏りのリスクは最上階だけに限りません。
マンションでも、上階がセットバックしていると、ベランダに屋根がないケースがあり、
ベランダ防水の劣化速度が急速に早まり、下の階の居室への雨漏りの原因となります。
そのため、区分マンションに投資する際には、購入する部屋の上階のベランダに屋根が
あるかどうかは、必ず確認しておいたほうがよいでしょう。
欠陥住宅9:エアコンの設置状況
最近の賃貸物件はエアコン完備が当たり前になっていますので、築古マンションだとしても概ね
エアコンが設備として導入されているケースが一般的です。
ところが、築古マンションや小規模な工務店が建てたマンションについては、
エアコンの室外機置場に欠陥があるケースがあるため注意しなければなりません。
賃貸物件の室外機は、概ね次のいずれかの方法によって設置されています。
・ベランダの床に設置
・ベランダの天井から吊り下げて設置
・マンションの屋上に設置
最もオーソドックスなのがベランダの床に設置するタイプで、交換する際にも容易に交換が可能です。
ベランダが狭い物件の場合は、床ではなく、天井から吊り下げているケースがありますが、
交換する際に作業員が2名必要になるため、工事費用が割高になります。
何らかの理由で室外機が屋上に設置されている場合、エアコン交換に多額の費用がかかるケースが
あるため注意が必要です。屋上まで階段で出られる物件であればよいのですが、構造上、
最上階のフロアから梯子を経由してハッチから屋上に出るタイプの物件の場合は、
サイズの問題で室外機がハッチを通れないケースがあります。
こういった物件は、新築当時の足場があるときに屋上に室外機を設置しているケースが多く、
将来的な交換工事のことをまったく想定していない欠陥物件です。
交換するとなると、別の場所に設置できなければ、クレーン車を手配して吊り上げるしか方法が
ありません。エアコンの室外機の設置場所は、建物の外観を見ただけでも、エアコンのダクトの経路を
たどればおよそわかりますので必ずチェックしましょう。